n-i-p構造とp-i-n構造の詳細分析
歴史的に最も早く高効率を達成したアーキテクチャで、長らくペロブスカイト研究の主流でした。特定の高性能ETL(例:SnO₂や緻密なTiO₂)との組み合わせで高い電荷収集効率を発揮します。
2024年3月、清華大学が新HTL材料T2と真空蒸着技術により26.21%の認証効率を達成。界面層の最適化によりp-i-n型に匹敵する性能を追求し続けています。
正型構造の課題を克服するために開発され、現在最も有望な商業化経路の一つ。優れた熱安定性、長期安定性、低ヒステリシス特性を持ち、界面欠陥のパッシベーション技術を効果的に適用できます。
過去はn-i-p型と比較して効率が劣る制約がありましたが、界面エンジニアリングの進歩により「効率パリティの閾値」を突破。27.3%(蘇州大学/UNSW 2025年5月)で世界記録を更新し、商業的面積(1cm²)で26.9%を達成する面積スケーラビリティのブレイクスルーを実現しました。
2012年頃のPSC研究の黎明期において、効率を飛躍的に向上させた功績があります。多孔質の金属酸化物(通常TiO₂)のナノ構造をETLとして利用し、ペロブスカイト吸収層をその細孔に浸透させることで、電荷収集のための界面積を大幅に増加させました。
高効率化の鍵が界面積から薄膜の結晶品質と界面の清潔さに移行した結果、現在の世界最高効率競争(27%超)の主流から脱落。2017年7月のUNISTによる22.1%記録以降、記録更新が停止。高温プロセス(450-550℃)が制約となり、フレキシブル基板との適合性やスケーラビリティの課題により、特定のニッチなアプリケーションに役割が限定されています。
| 特徴 | 正型(n-i-p) | 反転型(p-i-n) | メソポーラス型 |
|---|---|---|---|
| 一般的な積層構造 | TCO/ETL/ペロブスカイト/HTL/金属電極 | TCO/HTL/ペロブスカイト/ETL/金属電極 | TCO/メソポーラスETL/ペロブスカイト/HTL/金属電極 |
| 一般的なETL材料 | TiO₂, SnO₂, ZnO | PCBM, C₆₀, BCP | メソポーラスTiO₂ |
| 一般的なHTL材料 | Spiro-OMeTAD, PTAA | PEDOT:PSS, NiOx, PTAA | Spiro-OMeTAD, PTAA |
| 加工温度 | ETLに高温アニールが必要(例:TiO₂で450℃) | 低温プロセス対応(<200℃) | 高温アニールが必要(450℃) |
| J-Vヒステリシス | イオン移動により顕著な場合が多い | 一般的に抑制される、無視できる | 中程度(材料により異なる) |
| 安定性 | TiO₂のUV劣化、HTLの不安定性 | UV/熱により改善(NiOx使用時) | TiO₂のUV劣化、複雑な構造 |
| スケーラビリティ | 高温工程がフレキシブル基板の障害 | ロール・トゥ・ロール製造に非常に適している | 複雑な製造プロセス、大面積化が困難 |
| 最高効率記録 | 26.21%(単接合) 清華大学 2024年3月 |
27.3%(単接合) 蘇州大学/UNSW 2025年5月 |
22.1%(単接合) UNIST 2017年7月 |
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可視光を透過させ、発電層であるペロブスカイト層に光を吸収させる
電子または正孔を外部回路に輸送させる電極としての役割
TCOの透過率や導電性は太陽電池特性に大きく影響
| 特性 | FTO (Fluorine-doped Tin Oxide) |
ITO (Indium-doped Tin Oxide) |
|---|---|---|
| 耐熱性 | 高い(約600℃) | 低い(約350℃) |
| 透明性 | 中程度(87%) | 高い(96%) |
| 耐薬品性 | 高い | 低い |
| 表面平滑性 | 悪い | 良い |
| シート抵抗 | 5-10 Ω/□ | 5-15 Ω/□ |
| 導電率 | 10³-10⁴ S/cm | 10³-10⁴ S/cm |
| コスト | 低い | 高い(インジウム価格) |
有機無機ハイブリッドペロブスカイトの光学および電子的特性を示す化合物
t = (rA + rX) / √2(rB + rX)
rA, rB, rX: ペロブスカイトのイオン半径
| 材料 | MAPbI₃ | FAPbI₃ | CsPbI₃ | MAPbBr₃ |
|---|---|---|---|---|
| バンドギャップ | 1.55 eV | 1.48 eV | 1.73 eV | 2.3 eV |
| 結晶構造 | 正方晶 | 立方晶 | 立方晶 | 立方晶 |
| 熱安定性 | 中程度 | 高い | 高い | 高い |
| 水分安定性 | 低い | 中程度 | 高い | 高い |
| 最高効率 | 22.1% | 25.2% | 21.1% | 18.2% |
| 用途 | 標準材料 | 高効率 | 安定性重視 | タンデム用 |
有機分子と対抗電極との界面に挿入される薄膜材料
n型半導体から対抗電極への電子輸送を効率化
電子と正孔の再結合を抑制し、効率向上
n型半導体と比較してバンドギャップが広い
ペロブスカイトと輸送層の界面は電荷損失の重要な部位。 界面欠陥が電荷再結合を引き起こし、開放電圧と曲線因子を低下させる。
界面工学により、HTLフリーの反転型セルで26.4%の効率を達成。 イオン移動防止と電荷再結合低減により安定性も向上。
本データは Martin A. Green らによる「Solar Cell Efficiency Tables (Version 66)」に基づく引用情報です
太陽光がペロブスカイト層に入射し、価電子帯の電子が伝導帯に励起されます。
励起された電子と正孔が、ETLとHTLの界面で効率的に分離されます。
電子はETLを通って陰極へ、正孔はHTLを通って陽極へ輸送されます。
外部回路を通じて電流が流れ、電気エネルギーとして取り出されます。
太陽光がペロブスカイト層に到達
価電子帯から伝導帯への電子遷移
ETL/HTL界面での電子・正孔分離
各輸送層を通じた電荷移動
外部回路での電気エネルギー出力
太陽光がペロブスカイト層に到達
電子(e⁻)と正孔(h⁺)が生成
電子と正孔が分離されて移動
外部回路で電気エネルギー出力
結晶中のピンホールや界面の接触不良
電子と正孔がトラップ準位に捕らえられる
電子と正孔が結合してエネルギーが失われる
発電効率と出力が減少
電圧が下がる
変換効率が悪化
発電量が減少
イオン移動によりJ-V曲線でヒステリシスが顕著。 測定の複雑化と性能評価の困難さを引き起こす。
ヒステリシスが無視できる程度に抑制。 安定した性能評価と実用性の向上を実現。
• 2019-2025: NREL Best Research-Cell Efficiency Chart
• 最新記録 26.21%: 清華大学 2024年3月 (認証済み)
• 新HTL材料T2と真空蒸着技術による記録
• 2019-2025: NREL Best Research-Cell Efficiency Chart
• 最新記録 27.3%: 蘇州大学/UNSW 2025年5月 (認証済み)
• 単接合PSCの世界最高記録更新
• 商業的面積(1cm²)で26.9%達成
• Solar Cell Efficiency Tables (Version 66) 認定
• 2017年7月: UNIST (Seok team) による最高記録
• 最新記録 22.1%: UNIST 2017年7月 (NREL認証)
• 高効率競争の主流から脱落
• 高温プロセス(450-550℃)が制約